
<画像はStellariumを使用して作成しています。>
■2020年12月、木星と土星が"超"大接近!!
今年(2020年)の12月21日から22日(日本標準時、以下同じ)にかけて、木星と土星の"超"大接近(注1)が見られます。これほど木星と土星が近づく("超"大接近する)のは1623年以来、約400年ぶりのことです(注2)。今回、最も接近する(注3)のは12月22日午前3時頃ですが、その時間の木星と土星は地平線の下に沈んでいるため、日本からはその様子を観察することはできません。
日本で木星と土星の"超"大接近が観察できるのは、12月21日と22日の夕方(日の入り後)です。南西の低い空に注目しましょう。さて、木星と土星はどのように見えるでしょうか。1つに見える?2つに見える?この世の誰も見たことがない天文現象です。ぜひ、自分の目で確かめてみましょう!!
天体望遠鏡(注4)を使って観察すると、木星と土星を同じ視野で楽しむことができます。お近くの公開天文台や科学館で観望会が開催されていたら、参加するのも良いでしょう。また、天文現象をインターネット中継する天文施設も増えてきましたので、オンラインでも楽しめるようになってきました。
12月に入った頃から木星と土星の観察を続け、『見たよ』レポートに結果を投稿しましょう。日に日に近づく2つの惑星を見てワクワクが募ってくるかも。そして何より、来たる"超"大接近の日、木星と土星の位置が分からずに見逃してしまうという心配はなくなりますよ!!
(注1)天体同士(例えば月と火星、金星とアンタレス、木星と土星など)が近づいて見える(離角が小さくなる)天文現象を「接近」といいます。火星大接近や地球接近天体などの用語に使われる(距離的に地球に近づく意味での)接近とは異なり、天体間の距離が小さくなる現象ではありません。本プロジェクトでは離角が10分以下の接近を「"超"大接近」と呼んでいます。
(注2)1623年7月17日の"超"大接近では木星と土星は太陽からそれほど離れておらず、(赤道近くの一部の地域を除いて)実際に肉眼で観察するのは困難だったと考えられます。1623年より前に起こった"超"大接近は1563年8月26日で、さらに前は1226年3月5日です。1226年の"超"大接近では、木星と土星は約2分角まで接近しました。
(注4)木星と土星を同一視野で見ることができるのは、視野角20分以上(望遠鏡の倍率の目安は100-150倍以下)で12月19日頃から24日頃までです。
■木星と土星の接近は約20年ごと、次回の"超"大接近は約59年後!
木星は約12年かけて、土星は約30年かけて太陽の周りを一周します(注5)。木星の方が土星よりも短時間で太陽の周りを一周しますので、太陽から見ると木星が土星に追いつき、追い抜いて見える時期があります(追い抜く時期に2つの惑星は同じ方向に見えます。これを「会合」といいます)。木星と土星の会合は約20年ごとに訪れます。太陽から見る場合とは視点が異なりますが、地球から見る場合(注6)も同様に、木星と土星は会合周期とほぼ同じ約20年ごとに接近して見えます。

<木星と土星の軌道の傾きは誇張して描かれています。>
なぜ、今回の木星と土星の"超"大接近は珍しい現象なのでしょうか。地球から見たときの木星と土星の見かけ上の通り道(軌道)は同じ平面内にはなく、わずかな角度(注7)で交差しています。木星と土星は約20年ごとに接近しますが、その接近のポイントは軌道上で毎回異なります。今回の接近は木星と土星の軌道の間隔が非常に狭いところで起こります。
12月22日の最接近時には約6分角(満月の見かけの大きさの約5分の1)まで接近する"超"大接近となりますが、これは1623年7月17日以来、397年ぶりのことです。また、次に"超"大接近するのは約59年後の2080年3月15日ですので、まさに一生に一度見られるかどうかという稀な現象です。1901年から2100年までの最接近時の離角は、次の表の通りです。1901年以来、約60年ごとに最接近時の離角が小さくなることが見て取れますが、必ず"超"大接近になるとは限りません。
日付 | 木星と土星の最接近時の離角 | 備考 |
---|---|---|
1901年11月29日 | 0度26分 | "超"大接近の一歩手前 |
1921年9月10日 | 0度57分 | |
1940年8月7日 | 1度11分 | |
1940年10月20日 | 1度14分 | 木星と土星、どちらも逆行中 |
1941年2月15日 | 1度17分 | |
1961年2月19日 | 0度14分 | "超"大接近の一歩手前 |
1980年12月31日 | 1度03分 | |
1981年3月4日 | 1度03分 | 木星と土星、どちらも逆行中 |
1981年7月24日 | 1度06分 | |
2000年5月28日 | 1度09分 | |
2020年12月22日 | 0度06分 | "超"大接近!! |
2040年10月31日 | 1度08分 | |
2060年4月8日 | 1度07分 | |
2080年3月15日 | 0度06分 | "超"大接近!! |
2100年9月19日 | 1度13分 |
(注5)太陽系の8個の惑星(太陽に近い順に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星)は太陽の周りを同じ方向に回っています。
(注6)地球は木星や土星よりも速く、太陽の周りを1年で一周します。地球が木星や土星を追い抜く時期には、木星や土星が逆回りしているように見えます(これを「逆行」といいます)。地球から見る場合は、木星と土星が接近する周期や頻度、木星と土星の近づき方が複雑化しますが、その理由のひとつは逆行が起こるためです。
(注7)木星と土星の軌道傾斜角はそれぞれ約1.3度と約2.5度です。軌道が傾いている方向(昇交点黄経)も近いため、接近時の離角は大きい時でも1度程度となります。
(注8)最接近時の日付は東京(日本)から観察した場合のものです。表中の数値はステラナビゲータ11による計算結果を元にしています。