「北海道大学」と「なよろ市立天文台」では、太陽系外縁にある準惑星候補天体の衛星が、遠くの恒星を隠す現象の観測に成功いたしました。
今回対象となった天体は、2004年に発見された 「Orcus(オルクス)」と言う準惑星(※)候補天体の回りをまわっている「Vanth(バンス)」という衛星です。オルクスまでの距離は海王星よりも遠く、約70億km。太陽の周りを約250年で回っており、直径は推定約1,000kmです。バンスは直径約250km程度で、オルクスから9,000km程度離れたところを10日ほどで回っていることがわかっています。
今回の現象は、2014年3月2日の午前1時19分頃、ろくぶんぎ座にある12等星の手前をオルクスの衛星バンスが通過し、その12等星が最大10.7秒間 かくされる「可能性がある」という貴重なものであることから、広く観測が呼びかけられました。
IOTA(The International Occultation Timing Association、世界掩蔽観測者協会)など国内外の研究機関からも、この現象に対する予報が出されましたが、2月28日にブラジルの観測者から最終的な予報も発表され、日本の南西諸島付近を中心として±1,000km範囲で観測される可能性があるとのことでした。
名寄市は、予想の場所から遠く離れていましたが、太陽系外縁のこれらの天体については分からないことも多く、観測を実施することとなりました。 この観測によって恒星が減光する(影の通過する)時間等からその大きさ、軌道などを推測することが期待されます)
(※)2006年に惑星の定義がなされ、その中で自分の軌道の周囲に類似の天体が残っている物は惑星ではなく、準惑星というカテゴリーに分類されました。
詳しい予測データ等については「せんだい宇宙館」様のページをご覧ください。
研究協定を結んでいる「北海道大学大学院理学研究院」と「なよろ市立天文台」とでは、 北海道大学のピリカ望遠鏡(1.6m)を利用する共同観測計画を立て、北海道大学理学部が開発した観測装置を使用し観測を行いました。
◆北海道大学側 渡辺誠特任助教、大学院生 今井正尭、中尾光
◆名寄市側 村上恭彦(観測リーダー)、渡辺文健、中島克仁、佐野康男(北大研究員兼)
その結果、2014年3月2日午前1時19分頃、12等星が約2~3秒程度かくされて暗くなる(見えなくなる)様子をとらえることに成功しました。 冥王星を除いた、太陽系外縁天体の衛星による食の観測は世界初となります。
詳細については、今後の分析が必要となりますが、この観測により、遠く離れた外縁天体の軌道や大きさについて、より精度が高まることや未知のことが多い太陽系外側を研究する上で極めて重要な成果が得られたと考えています。