2030年北海道金環日食

2030年北海道金環日食

2030年6月1日の日食はどんな日食か

金環日食はアルジェリア、チュニジア、ギリシャ、トルコ、ウクライナ、ロシア、中国、日本などで見られます。日本では北海道のみで金環日食が見られます!

そもそも日食とは

 地球から見て月が太陽の前を横切るために、月によって太陽の一部(または全部)が隠される現象で、太陽の隠され方によって3種類に分類されます。

皆既食

 太陽・月・地球が一直線に並び、月の影が地球に落ちる時、その影の部分では太陽が月に隠され、日食として観測されます。地球と月の間の距離が近い場合、太陽が全て隠され、皆既食となります。

金環食

 地球と月の間の距離が遠い場合、見かけ上、月が太陽より小さく見え、太陽を全ては隠しきれず月のまわりに太陽がリングという形で見える金環食となります。

2012年栃木での金環日食

2012年5月21日 栃木県での金環日食(栃木県子ども総合科学館提供)

部分食

 皆既食や金環食の前後の時間帯や皆既食や金環食が見られる地域の周囲では太陽が一部だけ欠けて見られる部分日食となります。

2012年栃木での金環日食

2020年6月20日 名寄での部分日食

北海道ではどう見えるか

 礼文島と網走市を結んだラインと渡島半島を横切るラインの間では金環食となります。そのラインの外側では部分食となります。時間的には2030年6月1日(土曜日)夕方となります。

北海道でのエリア

2030年6月1日の金環日食が見られる地域


金環食のはじめ金環食の終わり
名寄16時54分16時56分
旭川16時54分16時57分
札幌16時54分16時58分

名寄ではどう見えるか

名寄で見られる金環日食としては、1872年(明治5年)6月6日以来、およそ158年ぶりとなります。

時刻太陽の高度
部分食の始め15時40分34.3度
金環食の始め16時53分21.2度
食の最大16時55分21.0度
金環食の終わり16時56分20.8度
部分食の終わり18時01分9.7度

名寄での日食経過

2030年金環日食 名寄での時間経過(AstroArts ステラナビゲータ10 で作成)


その次の日食はいつ?

次に日本で金環日食が見られるのは、2041年10月25日(本州中部)、皆既日食が見られるのは、2035年9月2日(北陸から北関東)

次に名寄で金環日食が見られるのは、2118年3月22日(北北海道)、皆既日食が見られるのは、2281年6月17日(北海道北部、オホーツク海側)

観察のしかた

安全な観測方法

ピンホールを利用する日食専用のグラスや遮光板を使う望遠鏡を使って太陽投影板に投影する

絶対にやってはいけないこと

肉眼で直接見る(数秒だけでも危険です)望遠鏡や双眼鏡を使う色付き下敷きやCD を使うフィルムの切れ端を使うすすをつけたガラス板を使うサングラスやゴーグルを使う日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡をのぞくピンホールを利用する

これまでの日食

※これまで起きた日食のうち、特に名寄と関わりのあるものについて記載しています。

1943年2月5日

中国、ソ連(現在のロシア)、日本、アラスカ準州(当時)、カナダで皆既日食が観測され、北太平洋とその沿岸部で部分日食が観測されました。国内では皆既帯が北海道の中央部を通っていたため、北海道の広い範囲で皆既日食が見られました。なよろ市立天文台の前身である、私設木原天文台の創設者である木原秀雄氏は、旧制名寄中学理科部員と皆既日食の撮影を行いました。

ピリカ望遠鏡

1943年の皆既日食が見られたエリア(名寄地区では皆既になり、美深ではなりませんでした。)

ピリカ望遠鏡

街中での皆既中の写真(松前 司氏 寄贈)

ピリカ望遠鏡

撮影された皆既日食

1948年5月9日

アジアのほとんどと周辺の一部で部分日食が観測されました。金環あるいは皆既日食が見られる地域は、(当時の)インド洋からタイ、上海付近、朝鮮半島、礼文島を通り、アリューシャン列島へと抜ける、わずか1.2 ㎞の帯状の範囲のみでした。名寄科学教育研究会は正式に観測隊を組織し、名寄高等学校観測隊もその中に加わり、礼文島に木原氏自作の望遠鏡を持ち込み、観測に挑みました。そして金環食の瞬間を捉えるという観測は大成功に終わりました。

1948年の金環皆既日食が見られたエリア

1948年の金環皆既日食が見られたエリア(礼文島のわずか幅1.2 ㎞の範囲)

木原秀雄氏と旧制名寄中学理科部員の撮影した写真

木原秀雄氏と旧制名寄中学理科部員の撮影

2012年5月21日

中国南部、日本、太平洋、アメリカ合衆国西部などで金環日食が観測されました。日本では、東京、大阪、名古屋といった大都市圏で見られるため、国内の7割の人々(約8000万人)が金環日食を見られるという非常に恵まれた日食でした。しかし名寄は残り3割のため、金環日食とはならず部分日食が見られました。

ピリカ望遠鏡

ピリカ望遠鏡のドームと日食の経過

日食とサロス周期

サロス周期とは

 ある日食からおよそ6585.3日(≒18年と約11日)後に太陽と月は交点(太陽の公転軌道面と月の公転軌道面の交わる所)から同じくらい離れた場所で再び出会い、同じような食を起こします。この周期をサロス周期といいます。
 この周期ごとに番号=サロス番号をふると、日食を同じような特徴を持ったグループ(サロス系列)に分類することができます。例えば、皆既日食が見られた1サロス周期後は皆既日食が、金環日食が見られた1サロス周期後は金環日食が基本的には見られます。

サロス系列 137番

 1948年5月9日の礼文島での金環皆既日食と2020年6月21日の金環日食(名寄では部分日食)は同じサロス系列(137番)です。2020年の日食は、名寄からは部分日食でしたがインド北部や台湾などで金環日食として観察できました。

木原秀雄氏と旧制名寄中学理科部員の撮影した写真の写真

1948年の金環皆既日食(礼文島)

2020年6月21日の名寄での部分日食の写真

2020年の部分日食(名寄)

2020年6月21日の台湾での金環日食の写真

2020年の金環日食(台湾雲林県 台北市立天文科学教育館提供)

サロス系列 128番

 2012年5月21日の日食と2030年6月1日の日食は同じサロス系列(128番)で、同じような食を起こすとされています。

2012年5月21日の名寄での部分日食の写真

2012年の部分日食(名寄)

2012年5月21日の名寄での部分日食の写真

2012年の金環日食(台湾新北市 台北市立天文科学教育館提供)

語源

 サロスという名称は、本来、古代バビロニア人が602=3600年を表すために用いていた言葉であり、日月食の周期を意味するものではありませんでした。いくつかの誤解を経て、この周期を指すようになってしまったのだそうです。
 サロス周期のほかに、サロス周期よりも長期間の日食の予報に使えるイネックス周期や、同じ月日に日食が見られるメトン周期などがあります。

※この「日食とサロス周期」の項については国立天文台「日食・月食の周期」のページ「歴wiki 日食の周期」のページ、及び「日食ナビ」のサイトの イネックス周期のページ、NASAの「NASA Eclipse Web Site」を参照しています。